Author:Kaoru(sophism spewage)

Hobby:読書(主にミステリ小説、精神分析学等思想書の類)、音楽鑑賞、思索、抑圧。
Admonition:「“神はひとりであって、そのほかに神はない”」(エラリイ・クイーン『九尾の猫』(ハヤカワ文庫)より)
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ヘイク・タルボット『絞首人の手伝い』読了
2008.07.03 Thu 23:56
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本書の巻末に付されている森英俊さんの解説によると、著者は、英国の密室研究家ロバート・エイディーが自身の不可能犯罪研究書のなかで「ジョン・ディクスン・カーに匹敵する唯一の密室長篇をものした作家」と絶賛したことで知られており、さらにまた、エドワード・D・ホックがアンソロジー『密室大集合』(一九八一年)を編成する際におこなったアンケートにて、タルボットの作品『魔の淵』(一九四四年)が、カーの『三つの棺』についで不可能犯罪物のベスト長篇の第二位に輝いたことで、コアな本格推理小説ファンのあいだでその名がいっきに広まることになったという、いわばシンデレラ・ボーイ的なミステリ作家(?)。本書『絞首人の手伝い』(一九四二年)は、そんな彼のデビュー作にあたりますが、実を言えば、長篇としては本書と先に触れた『魔の淵』を上梓しただけであり、しかもミステリの創作は本人にとってはあくまでも余技だったらしいというから驚き。何しろそれで、密室研究家をして偉大なるカーに唯一匹敵する密室長篇をものした作家と言わしめたり、『三つの棺』につぐ傑作といわれる作品をものしたんですからね。 嵐が荒れ狂うなか、クラーケン(北欧の伝説上の怪物)という名のいびつな孤島で怪事件が発生した。いく人もの客が集う晩餐会の席上にて、クラーケン島の所有者ジャクスン・B・フラントの異父弟にあたるエヴァン・テスリン卿が、義兄フラントと口論を重ねたあげく、フラントにむけて「汝、オッドの呪いにより朽ちはてよ」と吐露したとたん、フラントはその場に昏倒、あろうことかそのまま絶命してしまったのだ。あたかも、呪いをかけられたことが直接の原因であるかのように。しかも、怪現象はそれだけではなかった。その後フラントの死体は、なんと二時間ものあいだにすっかり腐乱してしまったのである。――はたしてこれはほんとうに一族に伝わる呪いの仕業なのか? そしてさらに、水の精霊ウンディーネのたたり、得体の知れない〈ヌメヌメとした〉怪物の襲撃、密室の謎……と怪事はその後も続き…… このように不可能趣味やオカルティズムがこれでもかというくらい横溢している点や、奇術の要素がたっぷりと織りこめられているあたり、硬派な「本格」ファンであれば当然ジョン・ディクスン・カーや、マジシャン探偵マーリニを創造したクレイトン・ロースンを思い浮かべることでしょう。たしかにカーやロースンの作品のように、このタルボットの作品もケレン味たっぷりではあるのですが、いかんせんそれを活かしきれてないというか、不可能犯罪やオカルティズム諸々を支える謎のトリックがことの真相と有機的に結びついていない。どちらかと言えば、強烈なはったりやごまかしありきで、無理にプロットをこしらえている感さえします。強烈な謎も、謎解き推理小説としてのプロットにきれいに溶けこますことができず竜頭蛇尾に終わるのでは宝の持ち腐れというもの。トリック自体はけっこうおもしろいものもあるのだけれど、いずれにせよその使いかたがまずいために子供だましという感じもするし。ただ、犯人の隠蔽方法はミスディレクションやレッドへリングをわりと上手に利用してますね。そのあたりが唯一の救いか。 本書に関しては厳しい評価になってしまいましたが、それでも未読で、なおかつすごぶる評判のよい(……そのはず)『魔の淵』はまあ読むんだろうな。 | ||
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